ヘルスソフトウェアの安全に関するリスクを
マネジメントするガイドラインがなかったという事実
疾病の治療、診断等に寄与し、障害が発生したときに人の生命や健康に影響を与えるおそれのあるヘルスソフトウェアは医薬品医療機器等法(薬機法)の医療機器に該当し、規制されます。※
一方で、薬機法対象外のヘルスソフトウェアについては、ISO9001に代表される品質マネジメントは実施されてきましたが、これまで規制対象の医療機器ソフトウェアに求められている安全に関する開発プロセスやガイドラインがありませんでした。
そこで、2014年の薬機法の改正を前に招集された「医療用ソフトウェアに関する研究会」(委員:厚生労働省、経済産業省、医師、産業界代表等)にて利用者の安全の観点から規制対象外のヘルスソフトウェアに必要な基準が検討され,検討の結果「ヘルスソフトウェア開発に関する基本的な考え方」が発行されました。
産業界は研究会が策定した指針に基づき、ヘルスソフトウェア開発ガイドライン(GHS開発ガイドライン)を発行し、ガイドラインの適合をサポートする協議会を立ち上げたのです。
※厚生労働省 平成26年11月14日 通知 「プログラムの医療機器への該当性に関する基本的な考え方について」参照
確かな品質と体系的なリスクマネジメントを目指すために必要な4つの領域
昨今、健康管理アプリなどヘルスソフトウェアを開発、運用している企業も多く見られるようになりました。
しかしこれまで述べたように、健康被害に対するリスクマネジメントのプロセスが各社でバラバラでした。
GHSは、リスクマネジメントではISO 14971を、品質マネジメントではISO 9001を、開発ライフサイクルにおいてはIEC 62304を、バリデーションではIEC82304-1をベースにした4つの領域を横断した開発ガイドラインを制定し、確かな品質とリスクマネジメントのプロセスを見える化させています。
いったいどこまでやるべき? 「リスク低減」の考え方
「リスク」を評価する場合には
・ハザード(危害の要因・危険物)(P1)
・危険状態(P2)
・危害
の3つに分解します。
電気ポットを倒した時のシーンに例えましょう。
・ハザード(P1)…ポットの熱湯
・危険状態(P2)…蓋が開いてお湯がこぼれる
・危害……………やけどを負う
この場合、リスクは、どの程度の危害が子どもに及ぶかという重大さと、その危害の発生確率(P1×P2)の組合せにより評価されます。
もし、1リットルの沸騰したお湯がすべて子どもに降りかかれば大やけどを負う恐れがあります。
一方で、このポットが倒れてもそれだけでは蓋が開かない構造であればどうでしょうか。
また、電気ポット本体に接続する電源ケーブルのコンセントをマグネット方式にすることより、仮に子供が電源ケーブルをひっかけても、ポット本体が倒れる確率を低く抑えることも可能です。
このように、お湯を沸かすというポット本来の機能を損なうことなく、子供がやけどを追うリスクをどこまで低減できるかを検討することが、「リスク低減」のポイントになります。
さらに、子どもにおよぶリスクには、ポットのお湯がこぼれ、それが電源ケーブル伝いに壁のコンセントまで伝わって漏電が発生するかもしれませんし、電気ポット本体が子供の頭にぶつかって外傷を負うかもしれません。
想定されるリスクは1つと限りませんが、想定したすべてのリスクに対して,リスクが受容できるレベルであるかどうかを判断する必要があります。
受容できるまでリスクを低減して、安全を確保するためには下記の4つのステップを踏むことが必要となります。
◆安全を実現するための4つのステップ
1)対象製品の Intended Use(= 意図する使用目的)を決める
2)リスクを特定( or 想定)する。
3)リスク低減策を講じる。
4) Intended Useに対してリスクが受容できるレベルまで低減されたかを確認
ヘルスソフトウェアの開発にはGHS開発ガイドラインを使いましょう
ヘルスソフトウエア開発企業の皆様、貴社の機器のリスクマネジメント対策は十分でしょうか?
ヘルスソフトウェア推進協議会(GHS)では、薬機法対象外のヘルスソフトウェア製品に対して、IECやISOの国際規格に準じた業界統一の開発ガイドラインを設けています。
また、それを十分に理解していただき、安全面のリスクを受容可能にするためのセミナーを随時開催しています。
GHS開発ガイドラインに基づいて作成されたヘルスソフトウェアに対して、ガイドラインへの適合を宣言したことを示すマークを付与する取組みも行っています。(GHSマーク制度)
GHSマークを取得することにより、その企業がヘルスソフトウェアに対するガイドラインを考慮して製品開発をしていることを、ユーザー様に示すことができます。
ぜひ、GHSにお問い合わせください。
GHS(一般社団法人ヘルスソフトウェア推進協議会)のホームページはこちら
作画:まよなか
作画者紹介
2001年からデザイナーとして紙媒体から映像まで色々な経験を積んできました。
© 2018 moriyama kyoko/TOKYO Sprout Design inc./GHS